御誕生寺(猫寺)

 猫好きなら一度は行きたい福井の御誕生寺にやって来た。境内のあちらこちらで、様々な色柄の猫たちが自由気ままに過ごしていて、その周りを人間が勝手にお邪魔している。猫に密着しているのは常連の人であろう。新参者の私は、そろりそろりと猫に触れる。撫で方が気に入らなかったのか、起き上がってお尻を向けられてしまった。あまりにもソフトタッチで、こそばゆいのだろうか。筋力トレーニングで力を入れるのは得意だが、猫の扱いは難しい。どの猫も個性が溢れていて、魅力を四方八方に輝かせている。午後3時30分頃になると、一人の僧侶が金属製のボウルを杓文字でカンカンと鳴らしながら、猫の住処の方角からベンチの傍にやって来る。その僧侶とともにすっ飛んで来る猫の気持ちになると、「手の舞ひ足の踏むを知らざるなり(近思録)」、その光景に感服した。そして、ベンチ前のコンクリートに置かれた「雨樋」にご飯が投入されるや否や、猫たちが猛烈な勢いで食べる。中には、諍いをする猫もいるが、気が立っているからだろう、直ぐに収まる。早々にお腹を満たす猫もいれば、空っぽの「雨樋」を舐める猫もいて、食欲も様々なのは、人間と同じだなと苦笑した。賑わった食事が終わると、四方八方へと散会し、各自のお気に入りの場所で寛いでいる。人馴れしている猫たちは、「今日のお相手はこれまで。」と人間に言っているように思えた。お寺に、寄附とキャットフードを渡して、感動に埋没しながら猫寺をあとにした。「猫ちゃんたち、有難う!」

(令和5年6月24日参拝)塾長三木一之
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