「水と塩のゆらゆら」の体験
交わることのない異物が共存している水域は、幻想的である。その境界は、くっきり視認できるものではなかったが、明らかに海水が下層に拡がっている。ここは、紀北の銚子川河口付近。海水と淡水が同時に存在する汽水域は、何処にでもあるが、清流であれば視認が容易である。想像していたよりもこの辺りの川幅は狭く、実に浅い。塩の粒子が川の緩やかな流れの中で揺らいでおり、まるで微生物が集合しているように見える。海水と淡水がせめぎ合っている所は暖かく、それ以外は、川の冷たさを保持している。水温の高さで二層の現象を探索できることも興味を引く。上流へと歩を進めながらより明確な二層を探索する。川の深い所では、海水の入り込む量が多いので、二層の現象を捉えやすい(自説)。透明度の高い海に潜っても、塩味は分かるが、目で塩の存在を知ることはない。今回の山坂達者講座「水と塩のゆらゆら」での体験は、新たに地球の素晴らしさを実感することができ、実に意義深いものであった。その後、魚飛渓へと移動し、又口川(支流)で遊泳する。天候は曇り。他の遊泳客に交じって、下流と上流を行き来する。清流を期待していたが、満足に至らなかった。この日の宿泊のコテージは、真新しく、キッチンも清潔で、快適であった。
二日目、キャンプ場の傍を流れる銚子川に足を踏み入れるが、水量の少なさに驚いた。上流に向かって歩を進めるものの浅瀬が続くだけである。仕方なく、この場を離れ、昨年泳いだ種まき権兵衛の里へと向かった。ここ銚子川の透明度は、昨年同様抜群であるが、やはり水量がかなり少なく、遊泳客の賑わいもない。ほぼ貸し切り状態であったことは幸いである。銚子川の上流はどのような地形になっているのか気になるが、天候はすぐれないので、今回の講座を終了した。 塾長 三木一之