第2回山坂達者講座の記録(北比良テント泊登山)
平成30年9月15日(土)~9月16日(日)
参加者:三木一之(CL)、塾生2名(計3名)
当初は、南アルプス/聖岳~光岳登山の予定であったが、日程調整のため、2泊3日(+前泊)八ヶ岳テント泊縦走に計画を変更した。しかし、悪天候等諸般の事情により、結局、近郊の北比良1泊2日のテント泊登山となった。
9月15日(土)
10:40JR比良駅出発~イン谷口~青ガレ~13:30金糞峠~14:30コヤマノ岳15:00~16:00武奈ヶ岳~17:00釣瓶岳~17:30テント設置場所(テント泊)
9月16日(日)
6:00テント設置場所出発~地蔵山~蛇谷ヶ峰~12:30着てんくう温泉15:15発(シャトルバス)~朽木学校前15:37発(バス)~16:12着JR安曇川駅16:16発乗車
台風の影響で、多くの倒木が登山道を遮っていたため、道迷いや登山道から外れて歩行することが屡々であった。また、釣瓶岳以北では、落雷によって、大きな木が上から下へと裂かれたような形で残部を留めていた。登山道の周囲の形状も以前とは異なるもので、比良の山には、積雪時も含め、30回以上入山しているが、このような荒れた山容を見たことがない。
大山口からの正面谷と登山道、山の斜面は、いつもの姿と異なり、道を見誤ったのかと思う程であった。青ガレの入り口では、沢の水量が多く、慎重に渡渉した。青ガレでも、われわれ以外に人の存在がない。
金糞峠から少し下って、テント場を過ぎるが、今日は、一張りもなく、全く人気がなかった。私は、この八雲ヶ原に通ずる沢沿いの林間コースを良く好んで歩く。ところが、沢を渉る橋が壊れて、石を踏みながら渡渉したり、見慣れたはずの登山道から外れたりしたため、八雲ヶ原に辿り着けず、コヤマノ岳へと向かってしまった。コヤマノ岳の頂上は、立札がないとそこが頂上とは分からない、平たい場所である。ここで暫く休憩時間を費やした後、比良最高峰の武奈ヶ岳へと気持ちを走らせた。この頂上にも、他者はいなかった。八淵の滝に通ずる道の分岐、細川越も何となく台風の通過を感じさせていた。
釣瓶岳を過ぎると、緩やかな上下動を繰り返しながら、幾つかの峠を通過して行く。釣瓶岳を下ったところで、地面が平坦、かつ、木々に囲まれた場所があったので、ここに4人用のテントを張った。フライの細引きを繋ぎ止める石は皆無なので、ペグを出そうとしたが見当たらない。結局、細引き2本だけ、太い木に括り付けることにした。その内1本が木に届かないので、持参のお助け紐と細引きを繋いで、カラビナで固定した。テントの設置が完了すると銀マットを敷き、各自マットとシュラフ、シュラフカバーを、次いで、ザックをテント内へと収めた。
この日の夕食は、テント内でコーヒーを飲むだけであった。というのも、コヤマノ岳の頂上で、空腹のため、しっかり食事を取ったからである。夜になると、雨が降り出した。テントの中で、塾生とアルコール抜きで、午後10時まで会話をしたが、私が殆ど喋っていたので、講義のようになってしまった。それでも、普段聞くことの出来ない塾生の考えの一部を知ることができたことは、大きな収穫である。
快適なテントのお宿の御蔭で、3人とも睡眠を享受することができ、夜明け前に起きだした。荷物を整理し、テントを撤収する。有難いことに雨は止んでいた。テントの雨粒をさっと拭って袋に格納する。忘れ物はないか確認した後、朽木へと出発した。畑に通ずる地蔵峠で、お地蔵さんを左手に見ながら通過する。その後、同じく畑に通ずるヨコタニ峠へと登山道は続くはずであるが、立札が見当たらない。その間、山はかなり荒れているため、周囲を確認しながらの山歩きである。このまま行くと、畑へ下山しそうな気配がしたので、来た道とは筋が異なる登山道、おそらくこれが畑からヨコタニ峠に繋がる道と予想しながら上がる。すると、ヨコタニ峠の立札に辿り着けた。さらに、3つ目の畑からのコースが尾根に出くわすボボフダ峠を通過した。その後も、本来の登山道から外れたり、戻ったりを繰り返しながら、林の中を尾根歩きする。蛇谷ヶ峰へと登る手前で、おにぎりを一つ腹に収めて、気合を入れる。これが最後の上りである。
登山道が荒れていたせいか、いつもより遠く感じられた蛇谷ヶ峰の頂上でお湯を沸かし、コーヒーを愉しんだ。それにしても、昨日よりずっと山の周囲は真っ白で何も見えない。本来、この頂上の眺望は360度パノラマで、眼下には琵琶湖が拡がっている。朽木村の集落も霧の中である。
ここから、下山途中、立派な桂の木が鎮座するカツラ谷に寄ろうとしたが、その先で崩落しており、温泉へは行くことができない旨の立て看板を見て、早々に諦め、只管、てんくう温泉めがけて下山した。何しろ、湿気の多さが汗を乾燥させず、身体に纏わりついたままべた付いている。温泉で身体を洗ったとき、爽快感が体重を軽くしてくれた。いつもながら下山後の温泉は最高の贅沢であり、その後の生ビールは、砂漠に浸み込む清水の如く、瞬時に身体に同化し、心までも潤してくれた。こうして、第2回去稚敬天塾登山は無事終了した。
「登山は人生也。」
記録 塾長三木一之